日本メノナイトブレザレン教団

石橋キリスト教会
礼拝メッセージ 2023.12.17 日曜礼拝

「最初のしるし」

(ヨハネの福音書 2:1-11)

牧師:南野 浩則

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    「最初のしるし」

     

    ヨハネ福音書 2:1-11 南野 浩則

     

    カナの婚礼

     カナの婚礼での出来事が述べられています。カナの正確な場所は解っていませんが、イエスが育ったガリラヤ地方であることは間違ありません。イエスの母とイエス、その弟子たちが婚礼に招かれました。そこで一つの問題が起きます。接待用の葡萄酒が切れてしまったのです。これは主催者にとっては相当な不面目であり、単に宴席で飲み食いするものが足りなくなった話ではないのです。イエスの母がそのことを訴えているのは、母は婚礼の主催者から何らかの役割を任されていたのかもしれません。あるいは、そのことに気が付いて単に気を回しただけかもしれません。いずれにせよ、イエスの母はイエスにこの目の前にある緊急の問題について相談します。

     しかし、イエスの返答は非常に冷淡な印象を与えます。母親に対して「女よ」と呼びかけているのも失礼です。また、この問題に自分は関わり合いがないと言っています。その理由は、まだ自分の時が来ていないからです。この時とは、イエスの十字架と復活を指しているものと思われます。しかし、ここでのイエスの母の反応が面白い。イエスの返答を無視して、イエスが何かをしてくれることを間接的に期待しています。召使たちに指示することで、イエスにその期待を伝えています。

     

    葡萄酒の奇跡

     イエスは先ほどの冷たい反応や言葉に反して、葡萄酒が切れてしまった問題に自ら関わろうとします。大きな石の水瓶に水を満たすように召使たちに指示します。そして、その水瓶を宴席の世話役のところに持っていくように命じます。これだけでは何ら問題の解決にはなっていません。水を宴席に持っていくだけの話です。イエスの母の依頼があったからであろう、イエスの不思議な命令に素直に従っています。

     この間に、水瓶を満たしていた水は葡萄酒に変わっていました。世話役はこの葡萄酒がどこから来たのか知らなかったので、花婿が良い葡萄酒を取っておいたものと勘違いして、世話役も花婿も面目を施したことになりました。もちろん、裏方の人々(イエスの母、召使、イエス自身)は葡萄酒の出所を知っているし、イエスの弟子たちも知っているようです。

     このカナの婚礼の奇跡と呼ばれている葡萄酒の物語は、最初の「しるし」と呼ばれています。「しるし」とは奇跡を意味し、それを行った者が神から使われた者であることの証拠とされたようです。イエスの生きたユダヤ社会でも同じように奇跡は「しるし」と理解されていました。

     

    「しるし」がなくとも

     この奇跡としての「しるし」は、ヨハネ福音書では主題の一つで、イエスを証言する出来事して語られています。それは栄光であると述べられています。イエスが神の子であると指示しているからです。

     この栄光によって、弟子たちはイエスを信じることができるようになったとあります。もちろん、奇跡が起きることでイエスが特別な存在であることは理解できますが、そのイエスを神として受け入れるかどうかは、実は別の話です。それはヨハネ福音書の主張でもあります。この後、イエスは不思議な業と言葉をもって人々に宣教をしていきますが、同じしるしを見ても、同じイエスの言葉を聞いても、人々はイエスをめぐって分裂します。ある者はイエスを信じ、ある者はイエスを拒絶します。実は、ヨハネ福音書では見ること(経験すること、確認すること)によって信じるということには消極的です。見ずに信じること、しるしがなくともイエスを信じること、このようなあり方が大切であることをこの福音書は強く述べます。そのような意味で、最初のしるしに関わった弟子たちの反応は、ここではまだ不十分であるとも言えます。弟子たちがイエスを理解するにはキリストの復活を通らなければならなりませんでした。私たちは、イエスに面と向かって出会うことがなくとも、イエスのしるしを直接に見なくとも、イエスを信じたいと思います。私たちには聖書と教会の証言が与えられています。この言葉を通して、イエスを信じていきたいと思います。

     

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